茨木市文化・子育て複合施設『おにクル』
徹底的な対話から生まれた、人々が思い思いに過ごせるサードプレイス
-大ホール・図書館・子育て支援施設など多様な市民サービス施設を、縦の道や様々な仕掛けで融合した立体的な公園-
- ・市民の集う場所として、市役所に隣接する市の中心部に、都市公園と一体的に整備された公共複合施設です。
- ・茨木市・伊東豊雄建築設計事務所と一体となって事業を推進。あらゆるフェーズで市民との対話が行われ、構想段階から実施されたワークショップは108回以上、参加した市民は延べ2200人以上にのぼりました。
- ・障がい者などの関係団体20~30からヒアリング。多様な年齢・属性の市民の声を聴くことで最終的にインクルーシブな空間や運営が作り上げられ、竣工後の運営段階にも引き継がれています。
設計担当者のコメント
・茨木市ならではの多様な関係者との協働は、設計者として新鮮な経験であり、携われたことを誇りに思います。「おにクル」がこれからも多くの人々が思い思いの時間を過ごし、新たな出会いが生まれる場として成熟していくことを願っています。(國本)
・自分なりの活躍の仕方を見つけて、おにクルに関わってきた人が沢山います。一人一人が「参加者」から「主役」になってみんなで「おにクル」をつくった結果だと思います。(市川)

日々何かが起こり、誰かと出会う公共施設~縦の道を通じてつながる、壁のないまちなかの居場所
大ホール、図書館、子育て支援施設など多様なプログラムを7層にわたり積層させながら、「縦の道」という吹き抜け空間が建物全体をつなぎ、プログラムごとに壁や出入口で分断されることなく、シームレスにつながる空間を実現しました。
また、各階のプログラムに関連する図書を「縦の道」周辺に配置し、プログラムの連続性を高めています。

オープンスペースや図書を介して各階さまざまなプログラムが混ざり合い、「偶発的な出会いを生み出す次世代型の公共施設」の実現を目指しました。
初めてて訪れた人でもわかりやすい施設にする為、各階毎でプログラムを明快に分けると共に、階ごとにテーマカラーを決め、サインやカーテン、家具に展開しています。

外部のテラスを含め、施設内には随所にベンチやソファが配置され、自由に本を持ち歩きお気に入りの場所で読むことができます。試験シーズンには学生が自習する光景も良く見られます。
飲食も、ほぼ全館で一部を除き可能です。開館当初は、一部のフロアのみ飲食可能とする運用でしたが、利用実態を踏まえ、利用者との対話により飲食可能なエリアが拡大されています。
ルールで実態にそぐわない制約を増やすのではなく、多様な使い方を実現する為のルールを考える、といった意識が徹底されています。

オープンスペースでのイベントの音や、こどもたちの声が当たり前に聞こえながらも、各階の機能性を損なわないように、縦の道の吹抜け手摺やエスカレーター軒裏に吸音材を貼ることで下階の音が伝わりすぎないよう配慮しています。
音響シミュレーションを行い最適な騒音対策を施すことで、ひとつながりの空間を実現しています。
共感のプレイスメイキング 一緒に考えて、試して、作り上げていく
「育てる広場」をコンセプトに、構想段階から、計画・設計・運用に至るまで、作る人も、そこで活動する人も参加した数多くのワークショップが開催され、対話が行われてきました。
事業プロセスへの熱心な市民参画が、市民が主役となって使われる舞台「おにクル」をつくりました。ワークショップだけではなく、作る前に小さく「やってみる」プロセスとして、市民主体で企画・運営を行う社会実験が数多く実施されました。これらがみんなの「いいね」という共感につながっています。

建物、広場、ルール、市民活動など、施設づくりから仲間づくりまで、様々な活動に関してのワークショップが開催されました。

公共空間はコンサートやマルシェなど様々な活動に使える場。たくさんの人や活動が交じり合う施設では、みんなで企画を練り、ルールを考えたりすることで、使い方や使う人も育っていきます。

隣接する市役所との間にある道路「市役所前線」を廃道し、ウォーカブルな空間へと変化させていくための社会実験を実施しました。
「おにクル」で得た共感のプロセスを大事にしながら、産官学民が連携しながら、次のまちづくりへと展開していきます。
おにクルオープン後、学校帰りに遊びにきたり、勉強をする小中学生から高校生、スタジオでの習い事や、和室を使ったお母さん同士のお茶会や、誕生日会なども行われており、イベントがなくとも誰でもふらっと立ち寄ることができる公共空間になっています。
また、年間600件以上のイベントも企画され、結果として年間200万人近くの人が訪れています。
関連リンク
所在地:大阪府茨木市
竣工年:2023年
延床面積:約19,700m2
建築主:茨木市
設計:伊東豊雄建築設計事務所・竹中工務店JV
施工:竹中工務店