-天井材の地震対策-
大規模地震では、柱や梁などの構造体だけでなく、天井材などの非構造部材が破損・脱落し、人的被害や施設の継続利用に影響することがあります。天井の脱落対策では、特定天井に関する技術基準を理解したうえで、建物の用途や天井の条件、新築・改修の別に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
本記事では、天井脱落対策の基本と、ブドウ棚鉄骨を利用した天井下地を含む竹中工務店の技術を紹介します。
天井の脱落対策が必要な理由
地震時の安全を考えるうえでは、柱や梁などの構造体だけでなく、天井材をはじめとする非構造部材への対策も欠かせません。天井が脱落すると人への危害につながるだけでなく、建物自体に大きな損傷がなくても施設を使い続けられなくなる場合があります。まずは、天井の脱落対策が必要な理由と「特定天井」の基本を確認します。
天井材の落下は人的被害や建物の継続利用に影響する
近年の大規模地震では、天井や間仕切り壁、設備機器などの非構造部材にも多くの被害が生じています。なかでも天井材の脱落は、落下した部材によって死傷者が発生したり、安全確認や復旧のために建物の利用を停止せざるを得なくなったりするおそれがあります。
そのため、建物の構造体が地震に耐えられることに加え、天井材が破損・脱落しにくいように計画することが重要です。
「特定天井」には脱落防止の技術基準が定められている
2011年の東日本大震災で大規模空間の天井落下被害が相次いだことなどを受け、2014年4月から建築物の天井脱落対策に関する技術基準が施行されました。
日常的に人が利用する場所の吊り天井で、高さ6m超、面積200㎡超、質量2kg/㎡超のものは「特定天井」とされ、脱落防止のための構造方法が求められます。天井の高さや重さ、建物用途などの条件を踏まえ、適切な対策方法を選ぶことが大切です。
様々な対策技術
竹中工務店では、既存天井を補強する方法や天井自体を軽くする方法、吊りボルトを使わずに下地を支持する方法など、施設の条件に応じた天井脱落対策を開発しています。ここではそれぞれの対策技術を詳しく解説します。
劇場やシネコンのように音響性能が重要な空間では、安全性だけでなく本来の性能を損なわないことも考慮して対策しましょう。
タフティングサポート構法
タフティングサポート構法は、既存の吊り天井をワイヤーで支持した専用金物によって補強し、地震などで天井材が既存の下地から外れた場合でも落下を防ぐ構法です。天井裏と床面から施工できるため、大がかりな仮設足場を設ける必要がなく、改修中も施設を継続利用しやすい点が特長です。
2024年には劇場の既存天井へ初適用され、初適用時の試算では従来の落下防止措置と比べて施工費を約60%削減できるとされています。
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Lite-Safe(ライト・セーフ)
Lite-Safe(ライト・セーフ)は、天井面の構成部材などを2kg/㎡以下に軽量化した天井システムです。天井仕上げ材を軽くし、部材点数を抑えることで、安全性を高めながら特定天井仕様と比べて短工期・低コストで施工できるようにしています。
新築だけでなく既存下地の一部を再利用した改修にも対応でき、学校や集会場などの天井耐震改修にも活用できます。
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OTO-LESS(オトレス)耐震天井
OTO-LESS(オトレス)耐震天井は、音楽ホールやシネコンなど、高い遮音性能と耐震性の両立が求められる空間向けの天井システムです。一般的な防振吊り天井では、地震対策のブレースを設けることで振動が伝わりやすくなる課題があります。
OTO-LESSではブレースの下端と天井面の間に特殊な接合金物を設け、音の伝搬を抑えながら耐震性能を確保します。
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アジャストソエル
アジャストソエルは、天井下地となるブドウ棚鉄骨に直付け金物を取り付け、吊りボルトを介さずに野縁を支持する構法です。一般的な特定天井では斜め部材を設置して揺れを抑えますが、設備配管やダクトと干渉し、天井裏のスペースが限られる場合には施工が難しくなることがあります。
アジャストソエルは吊り天井とならないため特定天井に係る技術基準の制約を受けず、直付け金物の最大15mmのレベル調整によってブドウ棚鉄骨の精度誤差も吸収できます。アジャストソエルの直付け金物は、販売開始から現在までに約320万個の採用実績があります。
劇場・ホール等の天井の耐震化
劇場や音楽ホールの天井は、音響や意匠上の要求から一般的な天井より重く、複雑な形状になることがあります。そのため、地震時の安全性を確保するには、部材単体の強度だけでなく、実際の形状に近い条件で天井全体の挙動を確認することが重要です。
原寸大試験で複雑な形状の天井の安全性を検証
竹中工務店では、複雑な形状の音楽ホール天井を再現した原寸大の試験体を用い、地震の揺れを加えて必要な強度を確認する実験を行っています。
東西方向や南北方向などから揺れを与え、天井下地や金物の挙動を実大で検証することで、音響性能や意匠を保ちながら必要な耐震性を確保できるよう設計へ反映します。
建物の用途や運用条件に合わせて天井の地震対策を選ぶ
天井の脱落対策には、既存天井を補強して落下を防ぐ方法や天井を軽量化する方法、吊り天井そのものを避ける方法があります。
どの方法が適するかは、天井の規模や用途、既存建物の納まりだけでなく、改修中も施設を使い続ける必要があるか、音響性能を維持する必要があるかといった運用条件によっても変わります。竹中工務店では複数の対策技術を組み合わせ、建物ごとの条件に応じた天井の地震対策を検討しています。
