Solution
スーパー台風も再現可能な建物の風応答シミュレーション
-Kazamidori®-
スーパー台風の影響を考慮した設計を実現

台風などの強風に対して安全で快適な建物を計画するには、建物が受ける風の力「風荷重」を適切に評価し、外装材や建物形状などの設計に反映することが重要です。従来は風洞実験が中心でしたが、模型製作に時間と費用がかかる課題がありました。

本記事では、風荷重評価の基本と従来手法の違いを整理したうえで、竹中工務店の数値風洞「Kazamidori」による建物の風シミュレーションと強風対策を紹介します。

建物の強風対策で重要な「風荷重」とは

建物には、台風などの強風によってさまざまな方向から風の力が作用します。風荷重を適切に評価することは、外装材の安全性だけでなく、建物全体の形状や構造計画を検討するうえでも重要です。まずは、風荷重の基本とビル風との違いを紹介します。

風荷重は建物が風から受ける力

風荷重とは、風によって建物や外装材に作用する力のことです。強風時には風向や風速が一定ではなく、建物の形や周辺環境によっても受ける力が変わります。

そのため、平均的な風圧だけでなく、瞬間的に大きくなる風圧も踏まえて評価する必要があります。

窓ガラス・外装材・建物形状などの設計に影響する

風荷重の評価結果は、窓ガラスの面積や厚さ、外装材の仕様、建物形状などの検討に関わります。たとえば、建物の角部や上層部など、風の影響を受けやすい部分を把握できれば、安全性を確保しながら必要な性能を合理的に設定しやすくなります。

風荷重評価は、強風に耐えるための設計条件を具体化する工程の一つです。

ビル風と風荷重は評価する対象が異なる

「ビル風」と「風荷重」は、どちらも建物と風の関係を扱いますが、評価する対象が異なります。ビル風は、建物によって周囲の風が強まったり流れが変わったりする現象で、歩行者の安全性や快適性などを確認するために評価します。

一方、風荷重は建物そのものや窓ガラス、外装材などに作用する風の力です。強風時に建物へどの程度の力がかかるのかを把握し、その結果を構造や外装材、建物形状の設計に反映します。Kazamidoriでは、風荷重に加えて建物周辺の最大風速も解析できるため、建物の安全性とその周囲の風環境の両面から風の影響を検討できます。

従来のシミュレーション技術とその課題

台風に強い建物をつくるためには、「風荷重(かぜかじゅう)」の評価が必要です。風荷重とは、建物が受ける風の力のこと。例えば窓ガラスの面積・厚さ、外装材、建物の形状などに影響します。

数値シミュレーション(定常解析によるもの)

一般的な数値シミュレーションでは、平均的な風を対象とした定常解析が用いられることがあります。ビル風や室内の気流を平均的に把握する用途には有効ですが、風荷重評価で重要となる、時間とともに変化する風や瞬間的に大きくなる風圧まで捉えることはできません。

風洞実験

風洞実験は、建物や周辺市街地の縮尺模型を製作し、風洞内で風を当てて建物表面の風圧などを測定する方法です。高い精度で風荷重を評価できる一方、計画ごとに模型を製作する必要があるため、検討開始までに時間や費用がかかり、中小規模のプロジェクトでは採用しにくい場合があります。

数値風洞Kazamidoriの特長

Kazamidoriは、時々刻々と変化する風をコンピューター上で再現し、建物に作用する風荷重や風揺れを評価する「数値風洞」です。模型を製作せずに検討できるため、設計初期から複数案を比較しながら、強風対策を建物計画へ反映しやすくなります。

模型のいらない“風洞実験”

Kazamidoriでは、建物と周辺市街地をコンピューター上に再現し、時々刻々と変化する風の流れを数値計算します。建物表面に生じる風圧を求めることで、模型を使わずに風荷重を評価できます。

模型製作が不要なため検討の負担を抑えやすく、設計初期から建物形状などの複数案を比較しやすいことも特長です。

建物表面の風圧力と流線の可視化

過去の台風の再現も、将来のスーパー台風の想定も

Kazamidoriは気象データと連携することで、過去に発生した特定の台風を再現できます。さらに、将来の温暖化の影響で増加が想定されるスーパー台風の条件を設定し、建物に作用する風や周辺の風環境への影響を検討することも可能です。

実際の気象条件を踏まえて解析することで、台風時のリスク確認や設計条件の検討に活用できます。


台風19号(2019年)上陸時の風の流れを再現(建物情報はZENRINの3D地図データを使用)

PLATEAUや気象観測データとも連携

国土交通省の3D都市モデルPLATEAUや気象観測データと連携し、実際の都市形状や気象条件に近いデータを用いた解析も行えます。

周辺市街地を含む3Dモデルと観測データを組み合わせることで、指定した日時の風速分布などを可視化し、建物と周辺環境への風の影響を確認できます。


2019年10月12日12時~13日12時までの風速分布の変化

風の諸問題に対応

Kazamidoriは、建物に作用する風荷重だけでなく、風による建物の揺れや不安定振動、建物周辺の最大風速など、さまざまな風の影響を予測できます。

シミュレーションの結果は、建物形状や構造計画の検討にも活用できます。例えば、建物形状を工夫することで、強風時の建物の揺れを25%低減した検討例もあります。建物の安全性はもちろん、風揺れに対する居住性や建物周辺の風環境まで含め、計画段階から対策を検討できます。

Kazamidoriは2008年の開発着手以降、34件の建物に適用されています(2026年9月時点)。主な用途は建物に作用する風荷重の予測ですが、それにとどまらず、さまざまな建物や用途における課題解決にも活用されています。

適用例:建物周りの風速(建物形状の違いによる「風揺れ居住性能」をシミュレーション)

複雑形状の建物でも評価できる

数値解析を用いるKazamidoriは、細部を含む複雑な建物形状にも対応できます。模型製作では再現に手間がかかる形状でもコンピューター上でモデル化できるため、形状の違いによる風荷重や風の流れを比較しやすくなります。

設計案を変更しながら検討できることは、建築デザインと強風対策を両立させるうえでも有効です。

適用例:しゃちほこでシミュレーション

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