-リアルタイム
地震対応システム-
地震発生時、緊急地震速報によって揺れの到達前に情報を得られても、建物によって実際の揺れ方は異なります。特に高層建物では上層階で揺れが増幅したり、長周期地震動の影響を受けたりするため、建物ごとの応答を踏まえた安全対策が重要です。また、大きな揺れを受けた建物を地震後も継続して使用できるかどうかは、建物利用者にとって大変重要な情報です。
本記事では、緊急地震速報と建物内に設置した地震計の観測情報を用いた竹中工務店の「リアルタイム地震対応システム」の仕組みや導入・作動事例を紹介します。
リアルタイム地震対応システムとは
リアルタイム地震対応システムは、高度利用者向けの緊急地震速報と、建物内に設置した地震計の観測情報を用いて、地震の発生を知らせるだけでなく、建物ごとの安全対策を迅速にサポートします。
緊急地震速報を建物の安全対策につなげる
気象庁の緊急地震速報は、地震発生直後に各地の強い揺れの到達時刻や震度、長周期地震動階級を予想し、可能な限り早く知らせる情報です。地震の発生を知らせるだけではなく、強い揺れが到達する前に身の安全を確保するための時間をつくる役割があります。
ただし、速報から強い揺れが到達するまでの時間は、震源との距離などによって数秒から数十秒程度と限られます。そのため建物側では、速報を受信してから人が一つひとつ判断するのではなく、館内放送やエレベーター制御など、あらかじめ決めた安全処理へ素早くつなげることが重要です。
建物ごとの揺れを予測することが重要
同じ地表面震度が予想されていても、実際に建物内で生じる揺れは一様ではありません。建物の高さや構造特性などによって揺れ方が変わり、特に超高層建物では、地表面よりも上層階で揺れが大きくなる場合があります。
また、大規模な地震では長周期地震動によって超高層建物が大きく、長時間にわたって揺れることがあります。
緊急地震速報を用いた安全対策
「リアルタイム地震対応システム」は、高度利用者向けの緊急地震速報を用いた高精度な建物応答予測を活用することで地震の揺れが建物に到達する直前から地震の直後まで、館内緊急放送やエレベーター制御などにより在館者の安全をお守りします。
緊急地震速報から震度・到達時刻を予測
システムが緊急地震速報を受信すると、震源の位置や地震の規模などの情報をもとに、対象となる建物で予想される震度や強い揺れの到達時刻を算出します。
単に地震の発生を知らせるのではなく、「この建物では、いつ、どの程度の揺れが予想されるか」を判断材料として利用することがポイントです。予測結果があらかじめ設定した基準を超えた場合には、館内放送やエレベーター制御などの安全確保処理へつなげます。
建物応答や長周期地震動の影響を予測
さらに、地表面の予測震度から建物上部でどの程度の揺れが生じるかを予測します。超高層建物では地表面と上層階で揺れの大きさが異なるため、建物そのものの応答を把握することが重要です。
当社では、建物で観測した地震記録や応答計算値などを活用して、対象建物の揺れを予測します。また、2020年からは長周期地震動の予測情報も活用し、建物やエレベーターへの影響も予測することで、設備制御や地震後の安全判断に役立てています。
長周期地震動の予測情報の提供は、気象業務法に基づく予報業務の許可を受けた事業者に限られています。そのため当システムでは、同許可を受けたアールシーソリューション株式会社の予測手法による長周期地震動の予測情報を活用しています。
館内放送・エレベーター制御へ連動
予測された揺れが設定した基準を超える場合には、中央監視盤や館内放送設備、エレベーターなどと連動します。地震情報を表示するだけで終わらず、実際の設備制御まで自動的につなげられることが、リアルタイム地震対応システムの特長です。
例えばエレベーターでは、強い揺れが到達する前に最寄り階へ停止させ、扉を開放します。揺れが大きくなる前に乗客がエレベーターから降りられる状態をつくることで、閉じ込めなどのリスク低減につなげます。
地震計の実測データで建物の健全性を判断
リアルタイム地震対応システムは、揺れが到達する前の安全対策だけでなく、地震直後の復旧判断にも活用します。建物に設置した地震計の記録をリアルタイムに分析し、建物の応答と設計レベルを比較することで、建物の健全性を判断します。これにより、地震後に建物を継続して使用できるかどうかの判断を支援します。
導入実績と地震時の作動事例
竹中工務店では、実際の建物への導入に加え、大地震でのシステム作動結果も確認しています。導入先と東日本大震災時の事例を紹介します。
大手センタービル・梅田センタービルへの導入
リアルタイム地震対応システムは、大手センタービル(東京都千代田区)や梅田センタービル(大阪市北区)に導入しています。緊急地震速報から建物の揺れを予測し、その結果を館内放送や設備制御へつなげることで、地震発生時の在館者の安全確保を支援しています。
建物の高さや構造、設備条件によって地震時の揺れ方は異なります。そのため、建物ごとの特性や観測データを踏まえて応答を予測し、それぞれの建物に応じた安全対策を行うことが重要です。
東日本大震災では揺れ始める前にエレベーターを制御
2011年の東日本大震災では、大手センタービルに導入したリアルタイム地震対応システムが実際に作動しました。システムがエレベーター管制を開始したあと、建物に設置した地震計が揺れを検知したのは26秒後でした。
また、エレベーター管制の開始は、関東地方を対象とした一般向け緊急地震速報より43秒、建物に設置したP波センサーより63秒早いタイミングでした。強い揺れが始まる前にエレベーターを最寄り階へ停止させ、扉を開放し、エレベーター内での乗客の閉じ込めを防ぐことができ、緊急地震速報と建物応答予測を実際の安全対策へつなげた事例となっています。
