Solution
CO₂排出量を大幅に削減する環境配慮型コンクリート
-ECMコンクリート®-
CO₂排出量の6割削減と高品質を同時に実現

コンクリートは建物の構造を支える重要な材料である一方、製造時に多くのCO₂を排出することから環境負荷の高い材料としても知られています。そこで注目されているのが、CO₂排出の抑制や資源の有効活用を目的に開発された「環境配慮型コンクリート」です。

当社が独自に開発した「ECMコンクリート®(特許取得済)」の特長や一般的な「環境配慮型コンクリート」の種類について、わかりやすくご紹介します。

概要

日本のCO₂排出量の約1割は建設資材が占めており、中でもコンクリートの原料であるポルトランドセメントの製造時には多くのCO₂が排出されます。そのため、低炭素型のセメントやコンクリートの開発が急務となっています。

「ECM※1コンクリート」は、こうした課題に対応するために開発された環境配慮型の次世代コンクリートです。セメントの一部を高炉スラグ微粉末に置き換えることで、CO₂排出量を約60%削減しながら、従来と同等以上の品質と耐久性を実現しています。

さらに、セメント成分を最適化することで乾燥収縮を抑え、ひび割れのリスクを軽減。酸や塩分による劣化にも強く、沿岸部などの過酷な環境でも長期間性能を維持できます。中性化にも強く、計画供用期間は最長200年※2の設定が可能です。

  • 1 ECMはEnergy・CO₂ Minimumの略です。製造方式はプレミックス型と混和材型で、地域によって異なります。
  • 2 建設材料技術性能証明(一般社団法人 日本建築総合試験所, GBRC 材料証明 第13-11号 改2)を取得しています。

特長

● 従来のコンクリートに比べ、材料由来のCO₂排出量を約60%削減できます
● 独自のセメント成分の最適化により、ひび割れの原因となる収縮を3~4割低減できます(左下の図)
● コンクリート打設時の発熱量が少ないため、温度ひび割れのリスクが低減できます(右下の図)
● 地中に含まれる塩分や酸に対しても高い耐久性を有します

  • 収縮ひずみ測定結果
  • 断熱温度上昇量測定結果

適用事例

東京・横浜・大阪・兵庫を中心にレディーミクスト(生コンクリート)の出荷体制を整備し、さらに東京・名古屋・大阪ではプレキャスト部材(成形・硬化済のコンクリート)の出荷にも対応しています。

2024年6月末時点で、すでに全国107件のプロジェクトに採用されており、適用実績は着実に拡大中です。用途も幅広く、都市インフラから民間施設までさまざまな建築で活用が進んでいます。持続可能な建築を支える、実績豊富な環境配慮型コンクリートです。

【実際の適用例】

  • ● 国立循環器病研究センター(地下階・基礎部に使用)
  • ● コンクリート打設時の発熱量が少ないため、温度ひび割れのリスクが低減できます(右下の図)
  • ● 巴商会新砂水素ステーション(地上躯体に使用)
  • ● 名古屋駅前モンプランホテル(外装プレキャストに使用)
  • 国立循環器病研究センター(地下躯体・基礎への適用例)
  • 横浜市役所(地下躯体・基礎への適用例)
  • 巴商会新砂水素ステーション(地上躯体への適用例)
  • 名古屋駅前モンブランホテル(外装プレキャストへの適用例)

環境配慮型コンクリートとは

製造時に発生する二酸化炭素(CO₂)などの環境負荷をできるだけ抑えることを目的に開発されたコンクリートです。

CO₂排出量の削減は建設業界全体の重要な課題であり、近年では大手ゼネコンを中心に、技術開発や実用化が一気に進んでいます。

環境配慮型コンクリートの主な種類

環境配慮型コンクリートが求められるようになった背景には、「セメントの製造時に大量のCO₂が排出される」という課題があります。

セメントの原料である石灰石を高温で焼成する際、燃料の燃焼や化学反応によってCO₂が発生します。こうした問題に対応するため、近年では「セメントの製造方法を見直す」アプローチと、「コンクリートの利用方法を工夫する」アプローチの両面から、CO₂削減に向けた技術開発が重要です。

ここでは、主な環境配慮型コンクリートとして以下の3種類をご紹介します。

  • ● セメント低減型コンクリート
  • ● CO₂固定・吸収型コンクリート
  • ● CCU材料活用型コンクリート

それぞれの特長をわかりやすく解説します。

セメント低減型コンクリート

最も広く実用化されているのがこのタイプです。セメントの一部を、高炉スラグ(鉄をつくる際の副産物)やフライアッシュ(石炭火力発電で発生する灰)などの産業副産物に置き換えることで、セメント製造時に発生するCO₂の排出を抑えます。

「ECMコンクリート」もセメント低減型コンクリートであり、CO₂排出量を約60%削減することが可能です。

CO2固定・吸収型コンクリート

もともとコンクリートには、空気中のCO₂とゆっくり反応して取り込む「炭酸化」という性質があります。しかし、炭酸化は非常に緩やかで、吸収できる量もごくわずかです。

CO₂固定・吸収型コンクリートは、数時間〜数日という短期間で、効率よくCO₂を吸収・固定できます。吸収されたCO₂は素材内部に安定して閉じ込められ、環境に配慮した建材として長期にわたり効果を発揮します。

CCU材料活用型コンクリート

CCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用)技術を応用し、工場などから排出されたCO₂を原材料として再利用したコンクリートです。研究・実証段階の技術も含まれますが、将来的な展開が期待されています。

一般的な環境配慮型コンクリートの主な課題と当社技術との比較

環境配慮型コンクリートは各社からさまざまなタイプが登場していますが、その中でも「ECMコンクリート」は、CO₂削減率の高さと品質の両立において際立った特長を持っています。

以下の表では、一般的な環境配慮型コンクリートと「ECMコンクリート」をCO₂削減率・耐久性・実績・認証の4つの観点から比較しています。

  一般的な環境配慮型コンクリート ECMコンクリート®
CO₂削減 20~40% 60%
強度 環境に配慮した材料の割合が増えるほど強度が低下 セメントの成分最適化でひび割れを抑え、計画供用期間は最長200年まで設定可能
実績 少ない 2024年7月に適用プロジェクトが100件を突破
「指定建築材料」審査 ネックになりやすい 日本建築総合試験所の材料証明(GBRC 第13-11号 改2)を取得

まとめ

環境配慮型コンクリートは建築分野における脱炭素化を推進する技術です。当社の「ECMコンクリート」は高いCO₂削減効果と耐久性を兼ね備え、すでに多くのプロジェクトで採用されています。今後もこうした取り組みを通じて、持続可能な社会の実現と脱炭素化に貢献していきます。

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