Solution
木による付加価値向上
技術
-KiPLUS®シリーズ-
RC造、S造に木を組み合わせる新架構システム「KiPLUS®」

「KiPLUS®」シリーズは、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)に木材を組み合わせ、耐震・耐火性能を補いながら木の温もりやデザイン性を活かす新しい建築技術です。資材削減や施工効率の向上を通じて環境負荷を抑え、中高層建築における木材利用の可能性を広げます。

さらに、持続可能なまちづくりを支える技術としても高く評価されています。本記事では、KiPLUS®の概要とともに、各工法の特徴とメリットを分かりやすく解説します。

KiPLUS®とは?

「KiPLUS®(キプラス)」は、当社が展開する木造建築技術シリーズのひとつです。これまで同社が培ってきた耐火集成材「燃エンウッド®」シリーズや、木を使った耐震補強技術「T-FoRest®」シリーズに加わり、中高層の木造ハイブリッド建築をさらに広げていく役割を担っています。

KiPLUS®最大の特徴は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の主構造に「木を付加(キプラス)」する点です。建物に必要な遮音性や耐震性といった性能を補完しながら、これまで以上に木材を積極的に活用できます。

木を取り入れることで、快適性や意匠性を高められるだけでなく、国産木材の利用拡大や資源循環にもつながります。さらに、木造建築の可能性を広げることで、脱炭素社会の実現や持続可能なまちづくりにも貢献します。

KiPLUS®の主な受賞歴

2023 エンジニアリング功労者賞

中高層木造ハイブリッド架構システム「KiPLUS®」シリーズ

「KiPLUS®」には、さまざまな種類があります。

ここではそれぞれの種類を詳しく解説します。

木の耐震壁「KiPLUS® WALL(キプラス ウォール)」

「KiPLUS® WALL」は、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に、木でできた耐震壁(CLT壁)を組み合わせる技術です。CLT壁が地震の力を一緒に受け止めることで、構造全体の安定性を確保しています。さらに、柱や梁を従来よりも細く設計できるため、建物の自由度を高めつつ環境負荷の低減にもつながります。

木材を用いることで、仕上げ材としてそのまま室内に活かせる意匠性や、施工性の良さといったメリットも生まれます。また、第三者機関の評価によって性能が確認されているため、安全性と信頼性が客観的に裏付けられています。

  • CLT:直交集成板(Cross Laminated Timber)

木材を用いたCFT柱・鉄骨梁の耐火被覆「KiPLUS TAIKA(キプラスタイカ)」

「KiPLUS TAIKA」は、CFT柱や鉄骨梁に木材を組み合わせることで耐火性能を高める技術です。CFT柱向けの「KiPLUS TAIKA for CFT」と、鉄骨梁向けの「KiPLUS TAIKA for BEAM」は、日本で初めて国土交通大臣から2時間耐火構造部材として認定を受けました(特許出願済)。

「KiPLUS TAIKA」の特徴は、一般的に流通している木材をそのまま耐火被覆材として使えることです。木材は火災時にすぐ燃え尽きるのではなく、表面に炭化した黒い層をつくります。この炭化層が断熱材の役割を果たし、内部に熱が伝わるのを遅らせることで、CFT柱や鉄骨梁を長時間保護します。そのため、高層建築に求められる耐火性能を満たしつつ、木材をそのまま仕上げ材として見せる「現し」のデザインも可能です。

「KiPLUS TAIKA for CFT」では、柱の周囲にアングルや鋼板を用いて木材を取り付け、木材と鉄骨の間にできる空気層によって断熱性能を高めています。一方「KiPLUS TAIKA for BEAM」では、鉄骨梁の周囲にせっこうボードと木材を組み合わせる構成を採用し、設備配管用の開口も設けられるため、実用性にも優れています。

CLTとデッキ合成スラブを組み合わせた工法「KiPLUS DECK(キプラスデッキ)」

「KiPLUS DECK」(特許出願済)は、ビルやマンションなどでよく使われる床のしくみ「デッキ合成スラブ*¹」に木材(CLT)を組み合わせる工法です。金属のデッキ床の裏側にCLTを取り付けることで床が強化され、薄い板でも十分な強度を保てます。

「KiPLUS DECK」では、床を支えるための小梁の本数やデッキプレートの板厚を減らすことができ、必要な資材の量を抑えられます。さらに、施工方法が「現場で金属デッキとCLTを組み合わせるだけ」であるため、工事の手間も省くことができます。結果として、建物全体の資材削減や環境負荷の低減につながるのです。

  • *1 薄い鋼板を凹凸状に折り曲げたデッキプレートの上にコンクリートを打設し、一体的に荷重を支える床システム

CLTと「スパンクリート」を組み合わせた工法「KiPLUS SPANCRETE(キプラススパンクリート)」

「KiPLUS SPANCRETE」(特許出願済)は、スパンクリートコーポレーションとの共同開発で誕生した床システムです。工場であらかじめスパンクリート(プレキャストスラブ*²)の裏側に木材パネル(CLT)を組み合わせており、最大10メートルを超える広い空間を中間梁なしで支えることができます。

CLTが補強材として働くため、床のたわみや振動を抑え、快適で安定した空間を実現できるのも大きな特長です。大型のCLTは現場では取り付けが難しい場合もありますが、工場でスラブと一体化してから運搬できるため、施工の効率や精度を高められます。こうした工法により、広い面積の木質天井を美しく仕上げることが可能です。

  • *2 コンクリート部材を設備の整った工場で製造し、現地に持ち込んで組み立てる工業化工法

CLTと現場打ちスラブを組み合わせた工法「KiPLUS SLAB(キプラススラブ)」

「KiPLUS SLAB」(特許出願済)は、木材パネル(CLT)の上に鉄筋を組み合わせ、それを型枠として現場でコンクリートを打設する床システムです。鉄筋が補強材として機能することで、支えとなる仮設材を減らしながら大きな空間を確保でき、施工の効率化とコスト削減につながります。

コンクリートが硬化した後は、下側のCLTが床のたわみや振動を抑え、安定した快適な空間を実現します。さらに、CLTの板同士の間にあらかじめレールを組み込むことで、照明や空調といった天井設備を簡単に取り付けることが可能です。テナントの入れ替え時でもCLTを傷つけずに設備や照明のレイアウトを柔軟に変更でき、長期的な使いやすさも備えています。

適用事例

兵庫県林業会館(2019年竣工 5階建て KiPLUS® WALL(S造))

  • 施工中内観
  • 事務室内観
  •    外観

タクマビル新館(研修センター)(2020年竣工 6階建て KiPLUS® WALL(S造))

  • 施工状況
  • 内観
  •    外観

プラウド神田駿河台(2021年竣工 14階建て KiPLUS® WALL(RC造))

  • 施工状況
  • 住戸内壁
  • 外観

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まとめ

「KiPLUS®」シリーズは、鉄骨やコンクリートに木を組み合わせることで、耐震性・耐火性を確保しつつ、木の温もりやデザイン性を活かす新しい建築技術です。資材削減や施工の効率化にもつながり、環境に配慮した持続可能なまちづくりを支えます。

持続可能な社会の実現には、環境と人のどちらも犠牲にしない建築が求められます。KiPLUS®シリーズは、その実現に向けた取り組みとして、これからのまちづくりを支えていきます。