Optree
樹木の配置を最適化する設計支援技術
-Optree®-
環境性能の高いランドスケープ(※1)を効率的に導き出す設計支援技術

都市の屋外空間では、夏の暑さや強風の緩和、心地よい景観づくり、生物多様性への配慮など、緑地に求められる役割がますます広がっています。なかでも樹木は、日射を遮り、風を和らげ、視界に緑をもたらすなど、屋外環境の質を高める重要な要素です。

しかし、樹木の最適な配置をデザインすることは容易ではありません。樹木の種類や本数、配置の組み合わせが膨大であるためです。従来の設計プロセスでは、設計者が考えた複数案を環境シミュレーションで検証し、その中から適切な案を選ぶことが一般的でした。そのため、検討できる案の数には限界があり、環境性能とデザイン性を高めながら、コストを抑えることは困難でした。

当社が開発した「Optree(オプツリー)」は、環境シミュレーションと最適化技術を組み合わせ、敷地条件やコストなどの制約を踏まえながら、環境性能に優れた樹木配置を効率的に導き出す設計支援技術です。設計の初期段階から科学的な根拠に基づく複数の配置案を提示することで、快適で豊かな緑地の創出を支援します。

  • ※1 ランドスケープ:本来は「風景」や「景観」を意味しますが、建築や都市計画の分野では、建物周辺の屋外空間や緑地のデザイン、外構や造園を含む景観設計のことを指します。

ソリューションの概要(Optreeとは)

Optreeは、樹木の配置や種類をコンピューター上で計算し、屋外空間の環境性能を高めるための設計支援技術です。日射や風、緑視率(※2)などの環境要素を評価しながら、最適化アルゴリズムによって、より良い樹木配置案を効率的に探索します。

従来は、ランドスケープデザイナーや設計者が作成した案に対して、後から環境性能を確認する流れが中心でした。Optreeでは、あらかじめ環境性能の高い配置案を複数抽出し、それを設計者がデザインに反映していくことができます。これにより、設計の早い段階から、暑熱環境の改善、緑豊かな景観形成、植栽コストの抑制などを総合的に検討できます。

  • ※2 緑視率:人の視野に占める緑(樹木や草地など)の割合を示す指標で、緑の豊かさの体感を数値的に評価する際に用いられます。

Optreeの特徴

膨大な樹木配置パターンから最適案を効率的に探索

緑地計画では、樹木の本数、樹種、位置の膨大な組み合わせから、環境性能の高い案を優先的に評価。全体の1%未満の検討数で最適案を導き出し、従来比約100倍のシミュレーション速度を達成します。

暑熱・風・景観など複数の環境性能を評価

日射や風の影響、緑視率など、屋外空間の快適性や景観に関わる要素を数値的に評価。たとえば、歩行空間の木陰創出(暑さ緩和)や菜園の日射確保など、場所ごとに異なる環境要求を設定できます。

環境性能とコストのバランスを検討

環境性能の向上と植栽コスト抑制というトレードオフの関係を考慮。樹木に仮想的なコスト条件を設定し、「環境性能を高めながらコストを抑える」といったトレードオフを考慮した検討が可能です。

設計者の発想を支援する複数案を提示

Optreeが1つの正解を自動決定するのではなく、科学的根拠に基づく複数の有望案を提示。そこに設計者の意図や美的判断、利用者の動きを重ね合わせることで、より質の高いランドスケープデザインの創出を支援します。

技術のしくみ

Optreeは、以下のプロセスを繰り返しながら、環境性能の高い樹木配置を探索します。

樹木配置モデルを生成

樹木の大きさや植える場所などの条件を設定し、3Dモデルを作成します。

環境シミュレーションを実施

日射、風、景観などへの影響をコンピューター上で計算します。

最適化アルゴリズムで配置を改良

良い結果が得られた配置をもとに、より性能の高い配置案を効率的に探索します。

このプロセスを自動的に繰り返すことで、膨大な組み合わせの中から、環境性能・景観・コストなどの条件に合った樹木配置案を短期間で導き出します。

Optreeによる樹木配置の最適化プロセス

導入のメリット

Optreeを活用することで、以下のような効果が期待できます。

屋外の暑熱環境の改善

木陰を効果的に配置し、歩行者や利用者が過ごしやすい屋外空間づくりを支援。

緑豊かな景観の形成

視界に入る緑の割合である「緑視率」などを評価し、利用者が緑を感じやすい空間を計画。

場所ごとの用途に応じた環境調整

木陰が必要な動線、日射を確保したい菜園、生物の生息環境など、目的の異なる空間ごとに条件を設定。

植栽コストの抑制

樹木の本数や種類に関わるコスト条件を考慮し、環境性能と経済性のバランスを図る。

設計プロセスの効率化

従来よりも短時間で多数の配置案を検討でき、設計初期段階での合意形成や検討精度の向上に貢献。

想定される適用用途

  • ● 集合住宅の外構計画
     居住者の動線や広場、菜園、共用部など、場所ごとに異なる日射・緑視・快適性の条件を設定し、暮らしやすい屋外空間づくりを支援
  • ● ビル/研究施設/キャンパスの外構計画
     ワーカーや来訪者が利用する歩行空間、屋外休憩スペース、緑地などにおいて、暑熱対策や景観形成を踏まえた樹木配置を検討
  • ● 商業施設・公共施設
     利用者の滞留空間や歩行環境の快適性を高めながら、地域に開かれた緑豊かな空間づくりに活用
  • ● 生物多様性に配慮した緑地計画
     人の快適性だけでなく、生物の生息環境や光・熱環境を踏まえた緑地計画に活用

適用事例

朝日生命国立社宅計画〈あさひの杜国立〉

東京都国立市の「朝日生命国立社宅計画〈あさひの杜国立〉」では、緑豊かな環境づくりに加え、居住者用菜園の日照確保や植栽コストの低減を実現しました。1000本を超える樹木の配置パターンについて約500ケースを検討した結果、最適化を行わない場合と比較して、緑視率1.15倍向上、菜園の日射量7%向上、植栽コスト2.2%削減しました。このようにOptreeは、居住者の快適性や景観性だけでなく、敷地内の用途に応じた環境性能の向上とコスト低減を両立する技術として活用できます。

  • 緑地に求められた環境性能
  • Optreeの日射シミュレーション
  • Optreeにより最適化された樹木配置
  • 最適化結果に基づく緑地デザイン

竹中技術研究所 調の森 SHI-RA-BE®

Optreeは、人にとって快適な緑地づくりだけでなく、生物にとって望ましい環境づくりにも活用できます。竹中技術研究所の「調の森 SHI-RA-BE」では、人や生物にとっての熱・光環境を改善する最適な樹木配置を導き出し、生態系と調和した緑地の創出を目指しました。具体的には、水生生物の保全を目的に水草の光合成や水温に影響する日射条件を評価し、夏と冬の季節変化も踏まえた樹木配置を検討しました。こうした活用により、快適性と生物多様性の保全・回復を両立するネイチャーポジティブ(※3)な緑地計画に貢献しました。

  • ※3 ネイチャーポジティブ:生物多様性の損失を食い止め、回復軌道へ転換させるという考え方。自然を回復基調に向かわせることを目指す国際的な目標として掲げられています。
シミュレーション結果
生物多様性にも配慮した緑地デザイン

まとめ

Optreeは、樹木配置を経験や感覚だけに頼るのではなく、環境シミュレーションと最適化技術によって科学的に検討するランドスケープ設計支援技術です。暑熱・風環境の改善、緑豊かな景観形成、生物多様性への配慮、植栽コストの低減など、緑地に求められる多様な価値を総合的に検討し、自然と共生する快適な屋外空間づくりを支援します。当社は、Optreeをはじめとする自然共生技術の開発・活用を通じて、ネイチャーポジティブの実現に貢献し、人と自然が調和する持続可能な都市づくりを進めていきます。

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