Solution
木を使った新しい耐震
補強技術
-T-FoRest®シリーズ-
日本の木を使った耐震補強技術

日本は世界でも有数の地震大国であり、建物の安全性をどう確保するかは常に大きな課題です。従来の耐震補強では鉄やコンクリートが主流でしたが、工期やコストの増大、そして環境負荷といった問題が残されていました。

こうした課題に応える新しい技術が「T-FoRest®シリーズ」です。本記事では、T-FoRest®シリーズの特徴や導入事例をわかりやすく紹介します。

T-FoRest®とは?

かつて乱伐によって荒れてしまった日本の山々は、戦後に植えられた木々が大きく育ち、今まさに建材として使える時期を迎えています。これらの森林資源を生活や建築に取り入れ、経済の中で循環させていくことが、森を健やかに保ち続けることにつながります。

T-FoRest®の特徴

T-FoRest®シリーズは、木の持つ「軽さ」と「強さ」を活かした新しい耐震補強技術です。大きくわけて、3つの特徴があります。

まずは施工のしやすさです。材料には集成材やCLT(直交集成板)、LVL(単板積層材)といった木質素材を使用しており、現場での取り付けが比較的簡単です。工事期間を短縮できるうえ、騒音や振動も少なく、周辺環境への負担を抑えられます。

次に強度です。たとえば、「T-FoRest Light」の強度は鉄骨ブレースと同じレベルです。PC鋼棒を組み込む新しい工法では、従来の約2倍の耐震性能を実現しています。「T-FoRest Wall」は鉄筋コンクリート造の耐力壁に匹敵する強さを発揮し、安心して利用できます。

最後に環境への貢献です。木材は重量の半分ほどが炭素によってできており、利用することでCO₂を固定できるため、地球温暖化対策にもつながります。

このようにT-FoRest®シリーズは「施工の簡単さ」「高い耐震性能」「環境への配慮」を兼ね備えた、バランスの取れた耐震補強技術です。

T-FoRest®の主な受賞歴

2015 地球温暖化防止活動環境大臣表彰
2016 エコプロダクツ大賞(国土交通大臣賞)
2016 ウッドデザイン賞2016優秀賞(林野庁長官賞)
2016 プレストレストコンクリート工学会賞(技術開発部門)
2017 エンジニアリング功労者賞

T-FoRest®シリーズのラインナップ

T-FoRest®シリーズには、3つの種類があります。

● 木のブレース「T-FoRest® Light」
● 木の耐震壁「T-FoRest® Wall」
● CLTブロック耐震壁「T-FoRest® エストンブロック」

それぞれについて、詳しく紹介します。

木のブレース「T-FoRest® Light」

T-FoRest® Lightは、木材を使った耐震補強の中でも「ブレース」と呼ばれる構造部材に注目した技術です。ブレースとは地震の揺れに抵抗するための斜めの部材のことで、従来は鉄骨造が主流でした。

T-FoRest® Lightでは、強度の高い集成材をブレースとして利用し、さらに内部にPC鋼棒を内蔵することで、地震時に発生する「押す力」と「引っ張る力」を効率よく受け止められるように設計されています。そのため、鉄骨造のブレースと同等の耐震性能を持ちながら、木材ならではの軽さや温かみを活かせるのが特徴です。

加えて、木の利用拡大により森林資源の循環にもつながることから、環境面でのメリットも期待できるでしょう。

木の耐震壁「T-FoRest® Wall」

T-FoRest® Wallは木質パネルを用いた耐震補強技術で、建物の「耐震壁」として機能します。耐震壁とは、地震の揺れに抵抗するための重要な構造要素で、一般的には鉄筋コンクリート造(RC造)が採用されてきました。

T-FoRest® Wallは、集成材を直交させて接着したCLTや、薄い木材を積層したLVLといった木質パネルを活用し、RC造の柱や梁に専用の接着剤で固定する方法をとっています。この工法によって、RC造の耐力壁とほぼ同等の強度を確保しつつ、木の風合いを活かした空間デザインを実現できます。

木質材料を活用することで軽量化にもつながり、施工性や環境性能の面でも優れています。このように安全性とデザイン性を両立できる点が、「T-FoRest® Wall」の大きな魅力です。

CLTブロック耐震壁「T-FoRest® エストンブロック」

T-FoRest® エストンブロックは、CLTの製造過程で生じる端材を有効活用した、環境に優しい耐震補強工法です。不要になった木材を蝶々形の小さなブロックに加工し、それを接着しながら積み上げて耐震壁を形成します。1つのブロックは約4kgと軽量で、施工時に扱いやすいのが特徴です。

従来の大きなパネルを使う工法に比べて運搬や取り回しが容易で、現場での施工効率を高められます。さらに、デザインの自由度も高く、補強だけでなく空間演出にも役立ちます。

木材の端材を再利用する点で資源の有効活用にもつながり、森林資源の循環や環境負荷の軽減という観点からも意義の大きい工法です。耐震性と環境配慮の両立を実現した、新しいタイプの補強技術といえます。

耐震補強で使用する木質材料と製造方法

建物の構造材に使われる新しい木質材料として、「エンジニアリングウッド」が注目されています。エンジニアリングウッドとは木をただ切って使うのではなく、丸太を薄く切った板やシートを重ね合わせ、接着してつくる加工木材です。

代表的なものに「LVL」「CLT」「集成材」の3種類があります。

● LVL:丸太を紙のように薄くスライスして同じ方向に重ねたもの。柱や床など幅広く利用できる
● CLT:少し厚めの板を直角に交互に重ねたもの。壁や床のパネルとして使われる
● 集成材:厚めの板を同じ向きで重ねて作られたもの。柱や梁など大きな建物の部材に使われる

いずれも自然の木だけでは得られない強さや安定性が特徴で、地震に強い建物づくりを実現します。木を有効に使うことで森の循環にもつながるため、環境にもやさしい材料といえるでしょう。

適用事例

竹中工務店新倉竹友寮(2014年12月改修 T-FoRest® Wall)

  • 取付け工事状況
  • 食堂(CLT耐震壁)

武庫川女子大学文学2号館(2015年10月改修 T-FoRest® Wall)

  • 一般教室(LVL耐震壁)
  • セミナー室(LVL耐震壁)

有馬温泉太閤の湯・有馬きらり(2019年3月改修 T-FoRest® Light)

  • 取付け工事後
  • お休み処(木質ブレース)

尾鷲市役所本庁舎(2021年3月改修 T-FoRest® Light、T-FoRest® エストンブロック)

  • 事務室(T-FoRest Light)
  • 風除室(T-FoRest エストンブロック)

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まとめ

T-FoRest®シリーズは、木の「軽さ」と「強さ」を活かした新しい耐震補強技術です。工事がしやすく工期も短くできるうえ、地震に強く、環境にもやさしいという特徴があります。さらに、木材を使うことでCO₂を減らし、森を守る取り組みにもつながります。