Solution
人流データを活かした
新たなまちづくり
-人流ソリューション-
竹中工務店の「人流ソリューション」

近年、人の数や位置といった情報を捉える「センシング技術」や、集めたデータをリアルタイムに分析するIoT技術の進展により、現実の空間を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」という考え方が注目されています。竹中工務店では、建物のデータに加えて「人の動き=人流」もデータ化することで、商業施設や駅、オフィスなどの空間を、利用者にとってより使いやすいものにする取り組みを進めています。

こうした人の動きをデータとして捉え、課題の発見や改善につなげる手法が人流解析です。本記事では、人流解析の基本や活用方法を整理したうえで、竹中工務店が取り組む「計測」「可視化・分析」「シミュレーション」の人流ソリューションを紹介します。

人流解析とは

人流解析は、施設や街の中で生じる人の動きをデータとして捉え、空間が実際にどのように使われているかを読み解く手法です。来場者数だけでなく、移動経路や滞在、混雑まで把握することで、動線計画や施設運営の改善につなげられます。

人数・動線・滞在時間・混雑状況などをデータで把握する

人流解析では、空間内にいる人数だけでなく、人がどこを通ったかという動線、どこに長く滞在したか、どの時間帯・場所で混雑したかといった情報を扱います。

例えば、同じ来場者数でも、特定の通路に人が集中しているのか、施設全体を回遊しているのかによって課題は異なります。人数カウントや軌跡、滞在時間、混雑状況を組み合わせて見ることで、空間の使われ方をより具体的に把握できます。

人流解析の目的(空間の課題発見と改善につなげる)

人流解析の目的は、データを集めること自体ではなく、そこから空間の課題を見つけて改善につなげることです。レイアウト変更の前後で動線がどう変わったかを比較したり、イベント開催時の人の集まり方を検証したりすることで、施策の効果を客観的に確認できます。

混雑や滞留が起こりやすい場所を把握できれば、安全性や快適性の向上に加え、施設運営や集客施策の検討にも役立ちます。

人流解析に使うデータの選び方

必要な人流データや計測方法は、分析の目的によって変わります。竹中工務店では、取得したい情報の種類や精度に加え、コスト、計測期間、施工性などを踏まえ、LiDAR※1やBeacon※2、Wi-Fiなど複数のセンシング手法から適切な方法を選択しています。

  • ※1 LiDAR:Light Detection And Rangingの略称でレーザー光を照射して、物体の位置や形状を測定する技術。
  • ※2 Beacon:BLEやWi-Fiの電波を発信する装置を指し、電波強度などを用いて位置を測定する事ができる。

例えば、高い精度で人の位置や軌跡を捉えたい場合と、広い範囲の傾向を継続的に把握したい場合では、適した手法が異なります。

「人流」の目的

竹中工務店では2015年から、人の移動や滞留に着目し、オフィスや商業施設、駅、生産施設、展示施設など幅広い空間で人流データの計測・分析・可視化に取り組んできました。人流解析を通じて現状を把握するだけでなく、空間の改善や運用施策の効果検証につなげています。

さらに今後のまちづくりでは、実際に建物や街で生じる人流を把握することに加えて、事前に人流をシミュレーションし、人流データに基づいた新たなサービスを提供していくことが必要になると考えています。

レイアウト変更やイベント効果をデータで検証する

人流データを使うと、レイアウト変更やイベントの実施前後で、人の動きがどのように変わったかを比較できます。

例えば、通路の配置を変えた結果として回遊が広がったのか、イベントによって特定エリアへの滞在が増えたのかをデータで確認できます。感覚や印象だけでは捉えにくい変化を可視化することで、次の改善策を検討しやすくなります。

集客向上と混雑緩和の両立を目指す

人流解析は、人を集めるためだけでなく、混雑を避けながら快適に移動できる空間づくりにも活用できます。人を誘導したい場所や混雑リスクのあるエリアを把握し、誘導員や障害物の配置などを検討することで、人の流れを整えられます。

集客と混雑緩和を両立させながら、施設・空間全体の価値向上につなげることが狙いです。

人流データ活用ケース

竹中工務店の「人流ソリューション」

竹中工務店では、建物データに加えて人の数や位置、動線を「計測」し、得られた人流データを「可視化・分析」します。さらに、蓄積した人流計測データや研究成果にゲームAIを組み合わせ、人が自然に振る舞うような人流を事前に「シミュレーション」します。

計測からシミュレーションまでをつなげることで、混雑や滞留などの人の動きを評価し、空間の課題抽出や改善提案につなげています。

人流の「計測」

「イベント集客効果の測定」や「施設内の混雑状態の把握」など、目的に合わせた方法で人流を計測し、可視化・分析や他サービスとの連携に使えるデータを記録・収集します。

2016年の「大阪なんば駅前ひろば社会実験」では、道路やタクシー待機場を3日間限定の仮設広場として歩行者に開放し、1日3万人を超える入場者の流れを分析。空間の使い方を変えたことによる周囲への影響を検証しました。

人流の「可視化・分析」

人流データは、WEBダッシュボードや人流ビジュアライズアプリで可視化・分析できます。WEBダッシュボードでは人数や時系列の変化などを確認でき、人流ビジュアライズアプリではBIMから抽出した形状情報に人流データを配置して、現実の人の流れを3次元の仮想空間上に再現します。

駅構内の混雑度や滞留状況の分析に加え、竹中技術研究所では、建物設備やIoTデータを一元的に扱うビルOSである「ビルコミ®※3」と人流・環境データを連携させたデジタルツインアプリケーションにも活用しています。

  • ※3 ビルコミ:建物設備システムやIoTデータの効率的な活用のため、オープンな通信規格を採用したプラットフォームであり、データの収集と保存だけでなく遠隔からの建物制御も実現する。

人流の「シミュレーション」

人流シミュレーションでは、ゲームAIを活用したマルチエージェント型の仕組みにより、3D空間内の一人ひとりが周囲の状況に応じて行動する様子を再現します。建物の完成前でも、平時やイベント時など条件を変えながら人の流れや混雑を検証でき、設計意図や完成後の使われ方を視覚的に共有できます。

展示施設の入退場計画や公共空間のレイアウト検討では、通路幅、滞留、歩行者と自転車の交錯などの潜在的なリスクを事前に確認するために活用されています。