建設現場の床を自動でマーキング-自走式墨出しロボット-
Solution
建設現場の床を自動で
マーキング
-自走式
 墨出しロボット-
建設現場の床にマーキングするロボット

建設現場の墨出しは、仕上げ工事や設備工事などの基準となる位置を床や壁に示す重要な作業です。一方、作業箇所が広範囲にわたり、測量やマーキングを繰り返すため、効率化や省人化が求められています。

本記事では、墨出しロボットの基本や導入メリットを整理したうえで、CADデータをもとに床面へ自動でマーキングする竹中工務店の「自走式墨出しロボット」の仕組みや特長、普及展開について紹介します。

墨出しロボットとは

墨出しロボットは、壁、扉、設備機器などの取付位置を図面データから読み取り、床面へ自動でマーキングするロボットです。位置出し工程の一部を自動化し、現場作業の効率化を支えます。

墨出し作業を自動化し、床面へ位置情報をマーキングする

「墨出し」とは、部材を正しい位置に取り付けるため、基準となる線や位置を床や壁へ表示する作業です。

墨出しロボットは、CADなどの設計情報を作業データに変換し、墨出し箇所へ移動して線や記号、文字を描画します。多数の位置出しを繰り返す現場で、作業の自動化に役立ちます。

墨出しロボットが求められる背景

竹中工務店では、墨出しを効率化・自動化したいという現場のニーズを受けてロボット開発を進めてきました。墨出しは特定の職種だけでなく、建築に関わる多くの職種に必要な作業です。

そのため、墨出しを自動化することで職人が他の主要作業に集中しやすくなり、現場全体への波及効果も期待できます。

自走式墨出しロボットの仕組みと使い方

竹中工務店の自走式墨出しロボットは、CADデータから作業データを準備し、測量機で図面と現場の位置を合わせたうえで、自動でマーキングを進めます。

CADデータをもとに作業データを準備する

まず、PCを使用し、専用のクラウドシステム上でCADデータをもとにロボット用の墨出し作業データを準備します。ロボットを起動した後、操作画面から作業データを読み込みます。図面上の情報を、現場でロボットが処理できるデータへつなげる工程です。

測量機で位置合わせを行い、自動で墨出しする

作業エリア内にある2つ以上の基準位置を測量機で計測し、図面と現場の位置を合わせます。操作画面で作業範囲や障害物を設定して作業を開始すると、ロボットが墨出し箇所を巡回してマーキングし、作業終了後は自動で停止します。

小型・軽量化と移動経路の最適化で現場作業を効率化

竹中工務店の自走式墨出しロボットは、幅530mm×長さ670mm×高さ385mm、重量約22kgと小型・軽量に設計されています。現場間の運搬や作業場所への持ち込みがしやすく、約6時間の連続稼働が可能です。また、比較的安価な測量機を活用しながら、墨出しに必要な精度を確保しています。

さらに、点在する墨出し箇所を効率よく回れるよう、移動回数や移動距離が少なくなる順序で作業します。ロボット本体の扱いやすさだけでなく、移動時間まで抑えることで、墨出し作業全体の効率化につなげています。

レーザ測量機と墨出しロボットの構成、墨出しロボットによる作業手順

墨出しロボットを導入するメリット

墨出し作業の生産性向上につながる

2019年の試験導入では、OAフロアの墨出し1点あたりの所要時間を、従来機の98秒から33秒へ短縮しました。作業内容によって差はあるものの、職人による作業と比較して最大で約3倍の作業効率を確認しています。

また、100㎡の範囲を約4時間で墨出しした実績もあり、広い範囲を繰り返し施工する現場での省力化に役立ちます。

職人が主要な施工業務に集中しやすくなる

墨出しをロボットに任せることで、職人は部材の取り付けや施工状態の確認など、人の技能や判断が求められる作業に時間を充てやすくなります。また、人が作業していない時間帯にロボットを稼働させ、翌朝から次の施工に取りかかるといった運用も可能です。

限られた人員をより有効に活用しながら、現場作業を効率よく進められます。

作業の標準化や適用領域の拡大が期待できる

CADデータと測量機をもとに、設定した手順に沿ってロボットがマーキングするため、作業方法を一定にしやすいことも特長です。当社では建設現場だけでなく、機器の据え付けなど正確な位置出しが求められる業務への活用も想定しています。

実際に建設業以外の企業からも問い合わせをいただいており、幅広い分野への展開が期待されています。

墨出しロボットの実用化・普及展開

当社は、自走式墨出しロボットの実用化に向け、レンタルのニッケン、未来機械と共同で開発を進め、レンタル商品「SUMIDAS」へと発展させました。SUMIDASでは、クラウド上で墨出し用の作業データを作成でき、約6時間の連続使用が可能です。前日の業務終了時にロボットをセットし、人が作業していない時間帯に墨出しを進めることで、翌朝から次の施工に取りかかるといった活用もできます。

SUMIDASは2024年にレンタル運用を開始し、2025年末時点で500日以上のレンタル実績があります。なかでも、自動倉庫の設置に伴う墨出しでは作業効率の高さが評価され、好評を得ています。

レンタルのニッケン紹介動画

こうした取り組みが評価され、2024年には「“超”モノづくり部品大賞」の生活・社会課題ソリューション関連部品賞を受賞しました。また、2026年には日本ロボット学会の「実用化技術賞」も受賞しています。自走式墨出しロボットを研究・開発にとどめず、実際の建設現場で利用できる商品として展開することで、墨出し作業の省力化や生産性向上を支援しています。