より現実に近い空間の明るさ感を体感できるVRツールを開発~室内の視環境を設計段階でシミュレーション~

2018年11月19日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)と株式会社ビジュアル・テクノロジー研究所(代表取締役:金谷末子 以下、VTL)は、輝度分布※1に基づく空間の明るさ感を設計段階で光シミュレーションし、VRで体感できる視環境設計支援ツールを国立大学法人東京工業大学の特許技術を利用して、共同開発しました。

これまで当社は、「visiMAX®※2や「VRuno®※3といった空間体感支援ツールを開発してきました。しかし、実際の建築空間では、輝度対比※4や目の順応の影響により、同じ輝度値でも暗く感じたり明るく感じたりします。このような明るさ感を正確に表現するために輝度画像を用いた画像変換技術が必要でした。
このたび開発したツールは、より現実に近い空間の明るさ感をVRで体感できるものです。BIMデータによる建築モデルをベースに空間の輝度画像を作成し、明るさ感再現画像に変換します。さらにこれをVRに適用できる360°画像に変換することで、設計段階における視環境のシミュレーションが可能になります。これによりリアルな明るさ空間を実現し、建築前と建築後における明るさ感の違いを防ぐことで、設計者と建築主との早期合意が可能になります。

当社は2014年に「環境コンセプトブック」を発行し、室内空間の快適性や人の感性を大切にした建物づくり・空間づくりに取り組んでいます。また昨今の働き方改革においては、健康で働きやすい職場環境の整備が求められており、人の生理・心理に大きく影響を及ぼす光環境は重要な要素になっています。当社は今後、省エネと快適性の観点から、室内における快適な視環境の実現を設計段階からより高精度に計画・提案していきます。

システム概要

  1. 1.BIMデータを活用した輝度シミュレーション
    建築モデルをベースに、光シミュレーションツールを用いて空間の輝度画像を作成する。
  2. 2.VRに適用できる明るさ感再現画像への変換
    東京工業大学中村芳樹教授が開発したアルゴリズムを用いて、得られた輝度画像を輝度の対比と目の順応の効果を加味した人が感じる明るさや見え方に近い画像に変換する。
  3. 3.VRで明るさ感を体感
    VRに適用できるように360°画像へ変換する。(360°画像への変換は、今回VTLと共同開発)外光をカットした状態で閲覧することで、輝度分布に基づく人が感じる空間の明るさ感をVRによって体感できる。

特長

  1. VRを用いた今まで以上のリアルな空間体験が可能
  2. 輝度対比、明/暗順応を取り入れた視環境の確認が可能
  3. 建築モデルと容易に連携が可能
  4. 設計者、建築主との早期の合意形成が可能

適用例

  1. 通常の利用方法は、実際にはまだ実在しない空間を設計段階にシミュレーションし、空間の視環境評価を実施する。今回は開発ツールを検証するために、実在する当社オフィスにてBIMデータを入力し、シミュレーションを実施することで実物との比較検証を行った。
  2. CG画像に比べ、明暗のコントラストが現実に近く再現され、暗順応した目でみると光源も眩しくみえるなど、リアルな明るさを再現していることを確認した。