竹中工務店のインクルーシブデザイン

 竹中工務店のインクルーシブデザイン
竹中が考えるインクルーシブデザインコンセプト
年齢や性別、国籍、障がいの有無など心身の違いによりこれまで生きづらさを感じていた人たちとともに、新たなデザインと価値を創造するインクルーシブデザインが、建築やまちづくりにおいても注目されています。
竹中工務店は『ちがいでつむぐ これからのかたち』をコンセプトに掲げ、企画・設計・施工・保全を一貫して請負い、これまで以上に様々な人々にとってやさしい建築やまちづくりを実現するための取り組みを進めていきます。
ちがいでつむぐこれからのかたち

お客様の事業を建物のライフサイクルを通してサポートします

誰にとっても快適で利用しやすい環境の整備は、お客様にとってこれからの経営戦略の一つになります。竹中工務店は、お客様の事業のパートナーとして、建物のライフサイクルを見据え、多様な人々との関わりのなかで地域や社会にとって魅力ある建物を創り、サステナブルな経営に貢献します。
お客様の事業を建物のライフサイクルを通してサポート

インクルーシブデザインとは

これまで建物やモノ、サービスのデザインにおいては、平均的なユーザーのニーズが優先される一方、少数者(マイノリティ)とされた障がいのある人や高齢者のニーズは十分に反映されませんでした。
英国王立芸術大学院の名誉教授であるロジャー・コールマン氏は、1994年の論文で「インクルーシブデザイン」を提唱し、様々な側面からユーザーの多様性を考慮し、デザインプロセスにできるだけ多くのユーザーを巻き込むべきとする、インクルーシブデザインの論理と実践を進めました。
また、元ジャパンタイムズのアートコラムニストであるジュリア・カセム氏はインクルーシブデザインについて、平均的なユーザーだけでなく、これまでデザインから排除されてきた少数者も積極的に含めようとするアプローチであるとしています。

『できるだけ多くのユーザーを包含し、かつ、利益や顧客満足などのビジネス目標に対して有効なデザインを目指す考え方である』

インクルーシブデザインの特徴

・身体的、認知的、感覚的、言語的、文化的な多様性を考慮する
・デザインプロセスにユーザーを巻き込み、課題の気づきからアイデアを形にする
・誰も排除せず、使う人の気持ちを大切にする
・利益や顧客満足などのビジネス目標に対して有効なデザインを目指す

英国王立芸術大学院(イギリス・ロイヤルカレッジ・オブ・アート)名誉教授
ロジャー・コールマン氏

『これまで排除されていた人々を包含するデザインであり、メインストリームなデザインを行うアプローチ』

デザインが無意識のうちに犯してしまう6つの排除

6つの排除とその影響を理解し、人々を「インクルージョン(包摂)」するためのデザインが必要である。
・身体的排除
・感覚的排除
・知覚的排除
・デジタル化による排除
・感情的排除
・経済的排除

インクルーシブデザインの世界的第一人者
ジュリア・カセム 氏

多様化するユーザー

これまで平均的なユーザーから排除されてきた人々を包摂することがインクルーシブデザインの基本的な考え方です。近年では、四肢や視覚・聴覚などに障がいのある人々だけでなく、LGBTQなどの性的マイノリティ、さらには妊娠中や怪我などで一時的に困ることがある人々など、排除される人も多様であることが認知されており、より多様な人々が快適に利用できる建物やモノ、サービスのデザインが求められるようになっています。
Inclusive Design = Include(包摂する) + Design(デザイン)

いまなぜインクルーシブデザインなのか

インクルーシブデザインが求められている背景として、これまでの平均的なユーザーを中心とした価値観から、多様性を尊重し、誰もが参加できる社会を目指す価値観への変化や、障がいそのものに対する考え方の変化、制度の整備、経済的・社会的なメリットに対する認識の変化があります。

「医学モデル」から「社会モデル」へ

障がいがうまれる原因は、個人の身体面・精神面の機能ではなく、大多数を前提につくられた社会的環境であるという考え方が、1983年にマイケル・オリバー氏(イギリス)により提唱されました。国際連合で採択された障害者権利条約でも「社会モデル」の考え方が反映され、全世界的に社会がつくり出したバリア(物理的障壁を含む社会的障壁)を取り除くことが目指されています。
障がいの考え方は「医学モデル」から「社会モデル」へ

法制度の変化

日本においては、2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、障がいを理由とした不当な差別の禁止、社会的障害を取り除く合理的配慮の提供の義務化が民間事業者にも定められました。この法律は、障がいの「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、対象とされる障がい者の該当性は、状況等に応じて個別に判断されることであり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られないものとされています。また、障がい者の法定雇用率が段階的に引き上げられ、支援策の強化が求められるなど、障がい者雇用の促進が加速しています。
社会全体として、障がい者をはじめ、多様な人が安心して生活・活動できる場を提供することが求められています。

持続可能な未来のために

法や環境の整備が進むと、様々な人がまちに出て活動しやすくなります。これまでの平均的なユーザーだけではなく、将来のニーズも満たすようなより幅広いユーザーを対象とした使いやすい建物を整備することは、マーケットを拡げ、平均的ユーザーにとっても新たな価値をうみ出し、より長期的な視点で事業を継続していくことにつながります。
少子高齢化・人口減少によるマーケットの減少

インクルーシブデザインへの流れ

建築やまちづくりにおいては、バリアフリーからユニバーサルデザインへという動きがありました。
企業経営においても、ダイバーシティから、さらにインクルージョン、エクイティを加えたDE&Iを重視するように変化しています。
インクルーシブデザインは、これらの動きと連動しています。
竹中工務店でも、「ひとにやさしい空間」や、健康な建物やまちをつくる「健築®」など、快適で過ごしやすい空間づくりに、これまでも取り組んできました。
日本の建築空間と法改正

ちがいでつむぐ これからのかたち~実績のご紹介

企画・設計段階から多様なユーザーが参加し、ユーザーごとのちがいを理解し、対話を通じてつくりあげた建物の事例です。高齢者や子どもといった世代、身体の障がい、国籍、感覚や認知など、ユーザーの多様なちがいをくみ取りつくりあげた建物は様々なかたちとなりました。
日本の建築空間と法改正

中山視覚福祉財団 神戸ライトセンター

視覚障害・サポート団体から地域社会へ発信
オフィス然としてつくる視覚障がい者支援ボランティア団体の拠点



<受賞>
2022年日本空間デザイン賞入賞

中山視覚福祉財団神戸ライトセンター

茨木市文化・子育て複合施設『おにクル』

茨木市文化・子育て複合施設『おにクル』

世代を越えた居場所
徹底的な対話から生まれた壁のない市民のためのサードプレイス



<受賞>
2024年度グッドデザイン賞(主催:日本デザイン振興会)
グッドデザイン・ベスト100(公共施設)に選出
2025年みんなの建築大賞「大賞」「推薦委員会ベスト1」ダブル受賞

国分寺市庁舎

地域で暮らすすべての人とともに
みんなでつくる公園とつながる市庁舎

国分寺市庁舎

立命館アジア太平洋大学(APU)『Green Commons』

APU(立命館アジア太平洋大学)Green Commons

多国籍・多文化・ジェンダーレスな学びの場
100か国以上の多様な国籍・文化が集い、⼈・地域を育み続ける学びの森


<受賞>
2023年度グッドデザイン賞
令和5年度木材利用優良施設コンクール林野庁長長官賞
第27回木材活用コンクール特別賞(ウッド・コンビネーション賞)
第18回木の建築賞森のチカラ賞
第2回SDGs建築賞審査委員会奨励賞

有明アリーナ

多様な選手・観客が集い
訪れるすべての人が一緒に楽しめるアリーナ


<受賞>
2023年日本鋼構造協会賞業績賞、令和2年度消防庁長官表彰

有明アリーナ

ソリューションのご紹介

人流・行動シミュレーション
人流・行動シミュレーション

建物の利用者を想定したシナリオに基づいて人の流れや行動をシミュレーションし、動線や使われ方をイメージしながら計画を進めることができる技術です。高齢者や障がい者、子どもなど、これまで建物内で利用しにくさや不便を抱えていた利用者のアクセシビリティの向上に活用できます。

人流・行動モニタリング
人流・行動モニタリング

実際の人の流れや行動をモニタリングし、より利用しやすい建物にするための課題を把握することで、建物や運用の改善につなげることができる技術です。

避難誘導
避難誘導

火災が起きた際、延焼している場所を避けて安全に避難できるよう、火災状況に合わせて×印が出る誘導灯です。視覚的に分かりやすく、音による誘導が聞き取りにくい方、非日本語話者、子どもなどにも有効です。

災害時に使えるエレベーター制御
災害時に使えるエレベーター制御

火災が起きた際、建物内全てのエレベーターを停止させてしまうのではなく、延焼している区画以外ではエレベーターを利用できるよう制御する技術です。移動に困難を抱える方も避難しやすく、すべての建物利用者が短い時間で避難できます。

多様な人々が共感できる空間づくり
多様な人々が共感できる空間づくり

80種類のカード(アクティビティカード®)を用い、施設を利用する一人ひとりが希望する空間の使い方を皆で共有しながら計画を進める手法です。年齢や立場、障がいの有無を越え、相互理解を深めながら共感や愛着が得られる空間をご提案します。

ポジティブ・ネガティブ感情の見える化
ポジティブ・ネガティブ感情の見える化

まちや建物の魅力を、SNSのつぶやきなどから分析しマップに見える化する技術です。異なるバックグラウンドや視点からの意見や感情を反映したこれからのまちづくりができます。