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従来鋼材の約10倍の疲労耐久性を有する制振ダンパーにブレース型が登場

愛知県国際展示場に初適用

リリース

2019年8月29日
株式会社竹中工務店
国立研究開発法人物質・材料研究機構
淡路マテリア株式会社

竹中工務店(社長:佐々木正人)、物質・材料研究機構(理事長:橋本和仁 以下、NIMS)、淡路マテリア(社長:三尾堯彦)は、制振ダンパーの素材として現在一般的に使われている鋼材※1に比べ、疲労耐久性を約10倍に高めたFe-Mn-Si系耐疲労合金※2(特許登録済)を用いたブレース型の制振ダンパーを新たに共同開発し、愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」(愛知県常滑市 2019年8月30日開業)へ初適用しました。

※1 LY225等の制振用鋼材および建築構造用の一般鋼材
※2 Fe:鉄、Mn:マンガン、Si:ケイ素

このたび開発した制振ダンパーは、長周期・長時間地震動対策技術として共同開発し2014年に「JPタワー名古屋」※3へ適用したせん断パネル型制振ダンパーを応用し、ブレース型としたもので、Fe-Mn-Si系耐疲労合金の大型部材を大量生産できる合金製造方法およびFe-Mn-Si系耐疲労合金と鋼材との異種金属溶接技術の確立により実現しました。汎用性が高いブレース型ダンパーの追加により、ダンパーの設置バリエーションが増加し、一般建物から超高層建物までさまざまな空間プランにより幅広く対応できるようになりました。
開発合金は、疲労耐久性だけでなく靭性、耐腐食性も非常に優れています。今後、このたびの制振ダンパーのバリエーション拡大を活かし、建築分野に加え土木、他産業分野への応用も目指します。

ブレース型制振ダンパーの取付状況と詳細(本開発)

ブレース型制振ダンパーの取付状況と詳細(本開発)

せん断パネル型制振ダンパー(2014年開発)

せん断パネル型制振ダンパー(2014年開発)

技術概要と各社の役割

NIMSによる合金・溶接材料開発概要

本制振ダンパーの心材には、NIMSが鉄を主成分として高濃度のマンガンやケイ素などを添加して開発したFe-Mn-Si系耐疲労合金を用いています。また、構造躯体に力を伝える心材端部の接合部には、同じくNIMSが本合金専用に新開発した鋼材との異材溶接用材料(溶接ワイヤ)が採用されています。溶接時の溶接金属の化学成分変化や組織変化を考慮し、溶接条件を最適化することで、鋼材との安定した接合が可能となり、溶接構造による効率的な制振部材の製造が行えるようになりました。

淡路マテリアによる素材製造・部材製作概要

耐疲労合金の製造に関しては、淡路マテリアが加工熱処理条件の最適化などを行うことにより、連続鋳造法※4(溶解量60㌧/CH)および、一般のステンレス鋼の圧延設備を用いて、従来の製造法に比べ製造可能な圧延材の板幅、板厚、長さを大幅に拡大して大量に委託生産することが可能となりました。また、本合金と鋼材との溶接施工管理技術を確立しダンパー用心材の製造を行いました。

※4 溶融させた金属を連続的に鋳型に注ぎ、鋳型内で急速冷却する鋳造方法。歩留まりと生産性が向上、低コスト大量生産に向く。

竹中工務店によるダンパー部材の設計・性能評価概要

竹中工務店はこれら最新の技術開発成果を活用し、本合金と鋼材との溶接接合部も含めたブレース型制振ダンパーの設計を行いました。また愛知県国際展示場への適用にあたり、座屈補剛部材等の設計最適化を図り、本制振ダンパーの実大実験による性能評価も行いました。その結果、合金の耐疲労性能を活かした良好な性能が得られ、本建物において充分な耐震性能余裕度が得られることを設計段階で確認できました。
なお、耐疲労合金および異材接合用の溶接材料のいずれも、指定建築材料に関する国土交通大臣認定を取得しています。

プロジェクト適用

本制振ダンパーを適用した愛知県国際展示場の西棟は、100mx100mの無柱空間の展示ホール、会議室を有する建物であり、大きな重量を100mの大スパンで支持する特殊構造架構となっています。特に、建設地は南海トラフ地震で想定される震源に近い地域であることから、余震も含めた多数回の大振幅・長時間地震動を受ける可能性を考慮し、地震後の事業継続性を維持するために耐震性能余裕度を大幅に向上させる必要がありました。
そこで、大スパン鉄骨造建物の構造上重要な外周部に配置される制振ダンパーとして、円形鋼管と充填モルタルで座屈拘束するブレース心材にFe-Mn-Si系耐疲労合金を使用(部材長約6m、最大分担荷重約2000kN)した本制振ダンパーを16本採用しました。

愛知県大規模展示場建設工事 工事概要

建築主 愛知県
建築地 愛知県常滑市セントレア4丁目及び5丁目地内
用途 展示場・会議室
設計施工 株式会社 竹中工務店
監理 株式会社 日本設計
構造 S造/F2
延床面積 約89,900 m2
建設工期 2017年9月~2019年8月
愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」 https://www.aichiskyexpo.com/