Solution
木造建築の大規模化・高層化を実現する耐火集成材
-燃エンウッド®
    シリーズ-

脱炭素社会の実現に向けて木造建築への注目が高まるなか、課題となってきたのは「耐火性能」と「大規模化」です。当社が開発した耐火集成材「燃エンウッド®」は、この2つの課題を解決する技術として誕生しました。

本記事では、燃エンウッド®の特徴やラインナップ、導入実績、そして今後の可能性について、わかりやすくご紹介します。

耐火集成材「燃エンウッド®」の豊富なバリエーション

戦後に植えられたスギやヒノキなどの人工林は、現在ちょうど建築資材として利用できる時期を迎えています。しかし、林業に携わる人材の減少や、輸入材の普及による国産木材需要の低迷など、日本の森林を取り巻く状況には多くの課題があります。

当社は、独自の建築技術と木材を活用したプロジェクトを通じて、国産木材を循環的に利用する仕組みを広げています。森林の健全な維持や地域経済の活性化に貢献するとともに、国が推進する公共建築物の木造化や、SDGs (持続可能な開発目標)の実現を目指します。

  • 大阪木材仲買会館
    (2013年竣工 燃エンウッド1時間耐火仕様を採用)
  • パークウッド高森
    (2019年竣工 燃エンウッド2時間耐火仕様を採用)
  • フラッツ ウッズ 木場
    (2020年竣工 燃エンウッドSAMURAIを採用)
  • タクマビル新館(研修センター)
    (2020年竣工 燃エンウッド2時間耐火仕様を採用)
HULIC & New GINZA 8
(2021年竣工 燃エンウッド2時間耐火仕様を採用)
水戸市民会館
(2022年竣工 燃エンウッド1時間耐火仕様を採用)
  • 竹中工務店警固竹友寮
    (2023年竣工 燃エンウッドCLT耐力壁を採用)
  • 高層木造建築モデル Alta Ligna Tower
    (20階建 ハイブリッド高層木造建築 2025年目標)

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耐火集成材「燃エンウッド®」とは

木造建築は、木の温かみやデザイン性から注目を集めていますが、「火炎安全性」という大きな課題があります。燃エンウッド®は、このような課題を克服するために生まれた耐火集成材です。

独自の技術で火災に強い性能を持ちながら、木材ならではの美しさや心地よさをそのまま活かすことができます。

燃エンウッド®の概要

都市部など建物が密集する場所では、火災の延焼を防ぐために高い耐火性能が求められることがあります。そこで誕生したのが、当社の「燃エンウッド®」です。

燃エンウッド®は、国土交通大臣から正式に耐火構造として認定*¹された木材技術です。独自の燃え止まりのしくみにより、スギ・ヒノキ・カラマツなどの国産木材を柱や梁に“現し(あらわし)”*²の形で使うことができます。

2012年度には第9回エコプロダクツ大賞 農林水産大臣賞を、2014年には日本建築学会賞を受賞し、技術的価値と社会的意義が高く評価されています。

  • *1 第三者機関による高度な性能検証を経て、建築基準法令に準ずる性能があることを国土交通大臣が認める制度
  • *2 木の梁や柱の表面を耐火被覆などで覆わないで用いること

燃エンウッド®の特徴

燃エンウッド®は火災に強いだけでなく、環境や地域にも役立つ木材です。伐採適齢期の国産木材を活用するため、木材の利用が進み、林業の振興や地域経済の発展につながります。森林を適切に管理することで、災害の防止や自然環境の保全といった効果も期待できます。

鉄やコンクリートと比べ排出される二酸化炭素が少ないため、地球温暖化対策にも有効です。環境にやさしい建材として、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにも貢献できます。

燃エンウッド®の主な受賞歴

2012 エコプロ大賞農林水産大臣賞
2013 第22回地球環境大賞国土交通大臣賞
2013 第16回地球温暖化防止活動環境大臣表彰
2014 日本建築学会賞

燃え止まり機構の仕組み

木造建築の中高層化において、火災時に柱や梁などの構造材が燃焼すると、建物の構造強度が低下し、倒壊の危険性が高まります。燃エンウッド®では、この課題を解決するために「燃え止まり機構」という構造を採用し、火災による構造材の強度低下を防いでいます。

燃え代層と燃え止まり層の役割

燃エンウッド®の耐火構造は、断熱層と吸熱層の2つの「被覆(ひふく)層」によって成り立っています。外側の「燃え代層」は火災時に炭化し、熱の侵入を遅らせる断熱効果を発揮します。

一方、「燃え止まり層」は高熱容量の素材で構成され、熱を吸収することで火炎の進行を抑制します。このような二重構造により、荷重支持部への熱ダメージを防ぎ、構造安全性を保持します。

燃え止まり機構の効果

燃エンウッド®は、第三者の専門機関による耐火試験で実力が確かめられています。試験では、部材を最大945℃という非常に高い温度で一定時間加熱しました。その結果、部材は燃え広がることなく、しばらくすると自然に火が消える「自消性」が確認されました。

これは日本の建築基準法で定められた耐火性能の条件を満たしていることを意味し、燃え止まり機構の効果と安全性が客観的に証明されたことになります。

都市型建築で採用できる理由

都市部においては、火災時の耐火性能が重視されるため従来、鉄骨やコンクリート構造が主流でした。しかし、燃エンウッド®は独自の耐火構造により木材を「現し」(表面を被覆せず木の表情を活かす方法)で使用可能です。

木質の温かみやデザイン性を保ちつつ、高い耐火性能を確保し、機能性と意匠性の両立を実現します。

燃エンウッド®のラインナップ

燃エンウッド®は、建物の用途や規模に合わせてさまざまなタイプをそろえています。耐火時間が異なる仕様や強度を高めたハイブリッド部材、大きな空間を実現するタイプ、さらには耐力壁や遮音仕様まで、幅広いニーズに対応可能です。
ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。

2時間耐火仕様の「燃エンウッド®」

建物が高くなるほど、より強い耐火性能が必要になります。2時間耐火仕様の「燃エンウッド®」は、火災時の厳しい状況でも柱や梁が燃え進まず、建物を支える部分をしっかり守ります。

高い耐火性を実現できた理由は、部材の構造を工夫したことにあります。外側の燃え代層と内側の燃え止まり層の厚さは、1時間耐火仕様では85㎜ですが、2時間耐火仕様では105㎜です。さらに、各部の構成材料も見直しました。こうした性能によって、火の熱や炎が長時間続いても構造部分が傷みにくくなり、建物全体の安全性を高めます。

3時間耐火の「燃エンウッド®」

3時間耐火仕様の「燃エンウッド®」は、1時間・2時間の仕様と同じく木材の「荷重支持部」、「燃え止まり層」、「燃え代層」の3層でできており、柱や梁などに使われています。

新たに3時間耐火仕様を開発したことで、建物の階数に制限なく木造を取り入れることが可能になりました。従来の仕様では難しかった15階以上の高層建築にも木材を活用できるようになり、都市部でも木造建築の可能性が大きく広がっています。

「燃エンウッド®SAMURAI」

「燃エンウッド® SAMURAI」は、木材の中に鉄筋を組み込んだ新しいタイプの部材です。もともとの燃エンウッド®が持つ強い耐火性能に加えて、鉄筋を入れることで強度と硬さが増しています。

本技術により、木造では難しかった大きな空間(大スパン)の建物も実現できるようになりました。

  • 「SAMURAI」は、山佐木材と鹿児島大学が共同開発した技術です。

「燃エンウッド® CLT耐力壁」

「燃エンウッド®」シリーズには、耐力壁として使えるタイプもあります。「燃え止まり層」と「燃え代層」は柱や梁と同じ仕様ですが、建物を支える「荷重支持部」にCLT(直交集成板)を採用しています。国土交通大臣から「2時間耐火」の認定を受けているため、低層から高層まで、さまざまな建物の耐力壁として安心して使うことができます*³。

また、建物の重さや地震の揺れに耐える特徴があるため、柱を使わずに広い住宅やオフィス空間をつくることができます。壁の表面を「木現し」(木材を覆わずに見せる仕上げ)にすることで、木の質感を活かしたデザイン性も高められます。

  • *3 耐力壁の耐火時間の最大は2時間となります。

「燃エンウッド® CLT耐力壁」(遮音仕様)

「燃エンウッド CLT耐力壁」に「中空層」を組み合わせることで、音を通しにくい性能を持たせました。これにより、集合住宅や宿泊施設といった静けさが求められる建物にも利用できます*⁴。

  • *4 建築基準法に定める仕様(TLD45)と高性能仕様(TLD60)を選択できます。

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まとめ

燃エンウッド®は火に強いだけでなく、国産木材の活用を通じて森林保全や地域経済の活性化にも貢献する次世代の建材です。1時間から3時間耐火までの幅広い仕様や、大空間を実現するSAMURAI、耐力壁や遮音仕様など多彩なラインナップを備え、集合住宅から高層ビルまで幅広い建築に対応可能です。

また、木造建築の可能性を拡げる設計自由度の高さから、さまざまな場面で導入されるケースが増えています。今後も脱炭素社会の実現と木造建築の発展を支える技術として、人と環境にやさしい建築づくりに取り組んでいきます。